薬膳の基本 ― 日々の食卓からはじまるやさしい養生
薬膳の基本 ― 日々の食卓からはじまるやさしい養生
私たちの身体は、毎日の食卓から、食べることでできています。
肩こり、冷え、むくみ、疲れやすさ、なんとなく気分が晴れない――こうした“未病”ともいえる小さな不調は、身体からのサインです。
不調をほったらかしにせず、サインを見逃さず、日々の食卓で無理なく整えていくことが薬膳の食養生。
食事をほんの少し見直すだけで、やさしく整えていくことができます。
薬膳は、確かに上を目指して勉強すればとても難しい学問でもありますが、頑張って勉強だけ重ねても実際食べなくては全く意味がありません。特別な料理でも難しい理論でもなく、日々の食事で身体と心を調えることが何より大切。できることから少しずつでかまいません。
東洋医学では、自然界と人の身体は同じリズムで動いていると考え季節が巡るように、私たちの身体もまた変化し続けています。その変化を理解し、ちょっとした体の変化に気づくこと、そして自分の体調、季節に合った食材や調理法を選んでおいしく食べること、それが薬膳の養生の第一歩です。
心と体は連動しています。おいしく楽しく食べることも養生の一つと考え、難しく考えず、まずは季節ごと、不調毎にどんな食材がいいのかを知ることからスタートしましょう! ――20代の方にも、70代の方にも、その日からで遅すぎることはありません。薬膳のちょっとした知識がご自身のケアにつながれば幸いです。
陰陽のバランスをととのえる
東洋医学の基本となるのが「陰陽」の考え方です。
陰は「冷・静・内」、陽は「温・動・外」などを象徴します。身体はこの陰陽がほどよく調和しているときに健やかで、どちらかに偏ると不調があらわれます。
たとえば、冷えやむくみは“陰が強い”状態。生姜やねぎ、温性の食材や発酵食品など、身体を温め巡りを促す食材が助けになります。逆に、のぼせ、乾燥、イライラは“陽が強い”サイン。きゅうり、梨、豆腐、緑茶など、熱を冷まし潤いを与える食材で熱を冷まして整えます。
陰陽は私たちの体のバランスの指針。まずはご自身の体質がどちらかを知り「取り入れるもの、控えるもの」を知れば少しずつ体調にも変化があると思います。
五行と季節の養生
もうひとつの柱が「五行」。木・火・土・金・水の五つの要素で自然界と身体の働きを表したものです。
五行は季節とも深く結びつき、それぞれの季節に弱りやすい臓腑や整えたい働きが示されています。
・春 (木):肝に関連 のぼせやすさや血流に関係。
春野菜や香りのある食材がおすすめ
・夏 (火):心に関連、過剰な熱は心に負担がかかります。
熱を冷ます夏野菜や解熱効果のある苦味のある野菜がおすすめ
・長夏(土):脾に関連 湿気が消化力に影響を与え、むくみにも。
利尿効果のあるとうもろこし、豆類などがおすすめ
・秋 (金):肺に関連 乾燥した空気は呼吸器系を傷めます。
乾燥から守る白い食材、梨、百合根、はちみつがおすすめ
・冬 (水):腎に関連 寒さによわく水の代謝や生命力に関連。
腎機能を高める黒い食材や、胡桃、山芋など、アンチエイジングにもおすすめ
普段から薬膳を取入れるには、季節や旬に合わせて食材を選んで体調を整えていくことが大切。
そうすることでどなたにも無理なくおいしく続けられる、最も身近な養生法となります。
これからの連載について
この連載では、季節ごとの養生ポイントと、家庭で作りやすい薬膳レシピをあわせてお届けしていきます。
難しい理論を押しつけるのではなく、日々の台所で「今日からできる小さな工夫」をやさしく提案していきたいと思います。
薬膳は、あなたの暮らしを少し軽くし、身体と心をそっと支えてくれる知恵です。
次回からは、季節の変化に寄り添う具体的な食材選びについてお話しします。
薬膳料理研究家/国際中医師/東洋美食薬膳協会代表 谷口ももよ